中間技術再生研究所

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2.構造と安定性の考え方

2.1 基本構造と特長

 逆T型CFT並列防護擁壁は、コンクリート充填鋼管(CFT)の支柱を密に配置(標
準0.76m)した防護柵とそれを支える底版コンクリートからなる崩壊土砂防護
擁壁です。支柱には耐力と変形性能(エネルギー吸収能力)に優れるCFT、支柱間
の阻止面には土砂や礫を捕捉するに十分な剛性があり部分的に破断しても伝線
の心配のないエキスパンドメタルを使用しております。

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                  図-2.1 基本構造


 支柱を密に配置したCFT並列防護柵で崩壊土砂を受け止める逆T型擁壁とし
ていること、また支柱に角形CFTを活用したことで、従来工法の待受け式コン
クリート擁壁と比較してみた場合に次のような特長があります(図2-2参照)。

―コンクリート部分の最小化と斜面の切土を最小限にとどめることができる。
―これによって、コストを大幅に縮減でき、景観に配慮したものとなる。
―土砂災害防止法で規定される崩壊土砂の移動の力(衝撃)と堆積土圧、さらに
 中規模落石を捕捉できる強さを持つ。
―支柱の設置間隔が狭いため、大径の落石のほとんどは支柱を直撃することに
 なる。その落石エネルギーはCFT支柱単体の変形によって吸収される。
―ポケット底面幅が広く、しかもエキスパンドメタルと支柱の着脱が可能なため、
 小型重機を使っての堆積した土砂の除去が容易である。

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                       図-2.2 従来型との比較


2.2 対象とする荷重
 
1) 崩壊土砂による荷重
 土砂崩壊の対象は表層の小規模な崩壊であり、設計で対象とする荷重は土砂
災害防止法(平成12年施行)に基づいて算定する移動の力(衝撃力)とその後に
堆積した土石の土圧となります。

―崩壊土砂の衝撃力(移動の力)

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 2) 落石による荷重
 崩壊土砂対策工は、斜面の表層崩壊によって引き起こされる落石による被害
を防止するために、支柱はもとより阻止面においても落石を捕捉できる強さを
持つことが必要となります。

 落石規模は、落石対策便覧に示されているところの小規模(数十キロ以下)~
中規模(φ40cm~60cm位,数百キロ)を対象としています。  
 想定される落石エネルギーに対して防護柵が変形吸収できることを、衝突実
験によって確認しています(これについては3.実物大衝突実験による性能確認
を参照)。

2.3 擁壁の安定性の考え方
1) ポケット容量の検討  
 現地での地質調査などにより推定される崩壊土砂量を用いてポケット容量
(擁壁天端高まで堆積すると想定)を検討します。現地での推定が困難な場合は、
表-2.1に示す全国の斜面災害データ(4761件)での斜面高さごとに区分した崩壊
土砂量あるいは県が定めた値を参考とします。

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2) 安定性の検討
 安定性を検討するに当たっては、以下の4つの荷重作用時が対象となります。     

  ①平常時:自重+裏込め土圧  
  ②地震時:自重+裏込め土圧+地震時慣性力  
  ③衝撃力作用時:自重+裏込め土圧+崩壊土砂の衝撃力(移動の力)  
  ④崩壊土砂堆積時:自重+裏込め土圧+崩壊土砂の堆積土圧

 ただし、逆T型CFT並列防護擁壁の場合は、①と②の裏込め土圧と地震時の
慣性力は小さいことから、③と④の荷重作用時を安定性検討の対象とすれば
よいことになります。

 擁壁の安定性については、以下の検討を行なう。
 (1)滑動に対する安定
 (2)転倒に対する安定
 (3)地盤支持力に対する安定

 具体的な安定性の検討方法については、全国治水砂防協会発行の「新・斜面
崩壊防止工事の設計と実例-急傾斜地崩壊防止工事指針-本編,平成元年5月」第8
章8.2に準じて行なうことになります。
 その際に適用する荷重の組合せにおける安全率は、全国がけ崩れ対策協議会
発行の「崩壊土砂による衝撃力と崩壊土砂を考慮した待受擁壁の設計計算事例,
平成16年6月」をもとに表-2.2のとおりとなります。

               
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2.4 防護柵の安定性の考え方  

1)支柱および壁面材の安定性  
 衝撃力作用時と崩壊土砂堆積時において、支柱および壁面材の応力度が許容
応力度以下となるように設計を行ないます。
 
 支柱は、支柱間隔の幅分の荷重を受け持つとして発生する曲げ応力度と剪断
応力度が許容応力度以下となるように設計します。その際、充填コンクリートを
無視した鋼管のみの弾性断面係数を使って応力照査しますので、設計対象荷重
を繰り返し受けても破損することのない設計といえます。      

 壁面材のエキスパンドメタルは、変形(たわみ)を前提に、その幾何学的形状で
の力のつり合いから求まる引張力Tとたわみ量δが許容値以内となるように設計
します。

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2)基礎構造の安定性

―基礎部構造  
 基礎の底版コンクリートは、CFT柱を建て込むための鞘管を埋め込むことで
着脱可能としているだけでなく、その鞘管を支えるようにしてアンカー鉄筋を
配置することで、外側のコンクリートに圧縮力の負担をかけない安全性の高い
構造としています。これによって、柱基部での作用力による鞘管外側のコンク
リートのパンチング破壊を防ぐことができます。

―基礎構造の安定  
 衝撃力作用時と崩壊土砂堆積時、そして落石衝突時において、埋込み基礎部に
作用する断面力に対して安定した構造となるように、許容応力度法にて照査します。
具体的には、埋め込んだCFT柱からの力を鞘管を介して図-2.6に示すように分担
するとして、埋め込み部の上部コンクリートに作用する支圧をすべてアンカー鉄筋
で負担するように設計します。 すべての荷重ケースにおいて、アンカー鉄筋の引張
応力度とコンクリートの付着応力度、そして下部コンクリートの支圧応力度が許容
応力度内となるように、部材のサイズと埋め込み長さを決定していくことになります。

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