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CFTスリット型堰堤の構造と安定性の考え方(1)

2. 1 基本構造
 CFTスリット型堰堤は、コンクリート充填角形鋼管とそれを支える底板
コンクリートからなる逆T型CFT構造です。いたってシンプルな片持ち梁式
ですが、前回の「1. 2CFT化のメリット」で説明しましたように、その特性から
流木・巨礫の衝突に対して粘り強く抵抗できる構造となっています。

CFT2-01.jpg
                 図-2.1 土石流対応の基本構造

 従来の鋼管骨組構造の透過型堰堤では、土石流を受けてフランジ継手に
使用している高カボルトが破断し、鋼管部材が破損、流出するという脆性
破壊に起因する損壊がここ数年の間で何度か生じています。
 CFTスリット型堰堤にはこのような弱点となるフランジ継手を一切使って
おらず安全性の高い構造となっています。
 しかも片持ち梁式CFT柱の単純構造は、鋼材加工度の大幅減、それに付随
しての段違いのコスト縮減、支柱の脱着機能を容易に内蔵できるという多くの
利点をもたらしてくれることから、まさに究極のスリット型堰堤といえます。

では、具体的な構造について詳しく紹介していきます。


2. 2 CFT柱に要求される性能
 CFT構造は、既に述べてきたように、鋼管とコンクリートの相互拘束効果
により中空鋼管に比べて耐力が増強されるだけでなく、局部座屈の発生が
抑えられるとともに、座屈後の鋼管の変形を拘束するため、変形性能がよく
なることが大きな特徴です(第1回 図-1.3.7参照)。
 
 ただし、CFTであっても局部座屈を遅らせ粘り強さを発揮させるためには、
角形鋼管の断面寸法から決まる幅厚比B/ t (B:幅、t:板厚)を制限する必要
があります。
「2018年版冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル」によると中空鋼管を
柱に用いた場合の幅厚比の制限値は、
CFT2-07.jpg (F=基準強度)
となっています。CFTスリット型堰堤ではBCR295材を使用しますので、
CFT2-08.jpg
となります。
 これに対しCFTであれば、幅厚比制限値を中空鋼管よりも1.5倍まで緩和
できることが、これまでの調査研究に基づき「コンクリート充填鋼管構造
設計施工指針」など建築関連指針に明記されています。
これらを参考にすると、CFTの幅厚比の制限値は次のように設定できます。
B/ t≦29. 4×1. 5 =44

 腐食+余裕代を考慮した断面寸法が上記値を満足できるように角形鋼管
のサイズを選定すれば、局部座屈やせん断破壊を起こすことなく変形能力
(エネルギー吸収性能) の高い支柱となります。
 したがって、使用するCFTのサイズはこの制限値内となるように設計する
ことになります。


2. 3 基礎構造に要求される性能
 基礎構造の底版コンクリートは、重力式として、また埋込み基礎として
十分な安全性能を有すること、それにはCFT柱よりも基礎部が先に破壊
しないように設計する必要があります。
具体的には、
  ―土石流時の荷重(土石流流体力および堆砂圧)に対して、堰堤全体が
  重力式構造物として安定であること
 ―同じく土石流時において埋込み基礎部に作用する断面力に対して安定
  した構造であること
 一礫・流木の衝突に対しては、その衝突エネルギーをCFT柱の曲げ変形
  で吸収することから、それが発揮できるようにCFT柱の終局耐力に
  相当する力が埋込み基礎に作用しても鞘管外側のコンクリートが支圧
  破壊やせん断破壊しないこと 
が基礎構造に要求される性能となります。