中間技術再生研究所

株式会社共生 > 中間技術再生研究所 > 2.実証されたフランジ継手の脆弱さ

2.実証されたフランジ継手の脆弱さ

現地組立ての関係から、フランジ継手を多用している鋼管骨組構造の鋼製スリット堰
堤は、これまで土石流を捕捉した多くの実績を有し、透過型としての役目を果たしてき
ていますが、一方で近年の豪雨災害において、土石流の直撃を受けて破損するケースも
見られるようになってきています。
 下の写真は、2014年の南木曾町での土石流災害において被災した鋼管骨組構造の鋼
製スリットです。土石流を防げなかったとしてテレビでも大きく報道され、注目された
ことは記憶に新しいところです。フランジ継手に使われている高力ボルトが破断し、鋼
管部材の破損そして流出した事例です。まさにフランジ継手が脆弱部となっていたこと
を物語っています。

   南木曾の梨子沢第1砂防堰堤の場合は、そもそもフランジ継手の耐荷性能が、次頁の
図—4に示すように鋼管部材自体の持つ耐荷性能よりも大きく下回っていたことが、脆
性破壊を起こした大きな要因であるといえます。そのうえ、強固な、言いかえれば
<堅すぎたため>フランジがへこみ変形を拒み、部材に作用する荷重が大きくなったこ
とも要因となっていますので、フランジ継手が2重3重に安全性を低下させていることに
なります。<堅い木は折れるが、柳には雪折れなし>を実証したものといえるでしょう。

   鋼管骨組構造の場合は、部材数が多いほど構造物全体に与える影響が小さく致命傷に
なりにくいとして、ロバストネスなる指数が大きいほどリダンダンシーの高い構造と謳
っていますが、構造部材にこのような弱点を設けていては、粘りを発揮することなく一
気に破壊することになるわけで、逆に部材数が多いためフランジや溶接継手を多用して
いることが、脆弱さを招いているといえます。
   また、フランジ継手に礫が直撃することもあり得るわけで、継手構造の改善が望まれ
ます。

Z_05.png   Z_06.png
                       写真ー2 梨子沢第1砂防堰堤の被災状況
                        

Z_07.png

           一般部断面                                       フランジ継手  
Z_08.png
                              図ー4 梨子沢第1砂防堰堤の継手部断面形状


 最前列柱材のフランジ継手部の各断面係数は、
  鋼管φ609.6×22:Z=5,760㎤
   フランジ継手  :Z=986㎤(高力ボルトの有効断面を考慮した断面係数)
 鋼管の最外縁または最外縁のボルトが降伏応力度(耐力)に達するときの降伏モーメ
ントを計算すると、
  鋼管φ609.6×22:
     My=σy・Z=315×102×5,760=1,814×105N・m=1,814kN・m
  フランジ継手(高力ボルトM22×16本):
     My=σy・Z=900×102×986=887×105N・m=887kN・m
となり、フランジ継手部の耐力は、一般部鋼管の半分以下となっています。


最新覚え書きノート Z-スリット型砂防堰堤3.透過型のあるべき構造