せん断強度特性異聞

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せん断強度特性異聞

(その1)せん断強度特性の自家撞着
 
まずは、INSEM 材のせん断強度は圧縮強度の1/2.5であるというはなしから。これにもとずいて、モールの1 軸破壊円を描き、破壊円の包絡線を直線と仮定して内部摩擦角を求めると、おおよそ12°という結果が得られます(右図参照)。一方において、INSEM 材の性状は土砂とコンクリートの中間的な材料であるとみなされておきながら、他方で内部摩擦角が12°でしかないというのでは、遺憾ながら全く辻褄が合いません。
 
もとを正せば、INSEM 材は新材料であるとはいうものの、もともとがコンクリート(混凝土)のファミリー。だとすれば、せん断試験から得られた強度が相対的に高目に出たときは、これをウ呑みにせず、試験方法固有の影響の有無を疑ってみるべきだったのでしょう。ちなみに、「コンクリート工学(大塚浩司ほか,朝倉書店,2008 年3月)109ページ」には次のように記されております。
 
コンクリートのせん断強度(shearing strength)は、圧縮強度の1/4 〜1/6 程度である。一般に、せん断強度の試験は、図5.13に示すような特定のせん断面で破壊を強制する直接せん断試験方法で行われているが、アーチ作用や曲げなどの影響で、眞のせん断強度が求められる方法ではない。
 
(その2)標準的な水平打継目処理方法の適用限界
 
INSEM 砂防えん堤における水平打継目処理が、肝腎カナメの要注意ゾーンに対する特記がなく、おしなべて、清掃と散水だけで万事OKというのでは、いささか話がウマすぎます。これでは、INSEM 堤体からのボーリングコアの実態とも辻褄が合わないし、それに既往の砂防えん堤での土石流による袖部滑動破壊事故の説明もつきません。
 
砂防えん堤の右岸袖部が土石流の衝突により破壊され、下流へ飛ばされています。右下写真にみられるように、モノリシックな堤体がダム軸直角方向に破断された結果、地山に残っている粗々しいブロック側面の破断面に対して、右写真のブロック破断面は平滑で、水平打継目に沿って滑動したことを物語っています。
 
またその一方では、やはり生の試験データをそのままウ呑みにされて、圧縮強度の10数分の1という数字をそのまま設計計算に使用されている例もみられます。ことほどさように、せん断強度はINSEM材の場合においても、試験方法によって大きく左右されるということ。すなわち、供試体寸法や載荷方法の相違によって、せん断面に引張応力が少なからず作用したり、また上記のケースのようにアーチ作用で圧縮応力が大きく働いたりして、眞のせん断強度は中々一筋縄では求められないというのが実情。
 
INSEMえん堤においては施工合理化の一環として、通常水平打継目処理が割愛されますので、堤体の安定計算に際してINSEM材のせん断強度が必要とされる場合はありませんが、強いてその数値をと云われれば、その内部摩擦角を35°前後と想定されていることから、圧縮強度のおよそ1/4〜1/5程度とみておけばよいのではないでしょうか(土石流・流木対策の技術指針に関する講習会テキスト設計例4.2解説参照)。
 
 
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