INSEM堰堤/ダブルウォール化が低強度INSEM堰堤を実現

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ダブルウォール化が低強度INSEM堰堤を実現

 ダブルウォール化による中詰材の強化


   

 固化工法であるソイルセメントは、セメントを混合させ化学的に土の粒子間に粘着力を付与させて固結される方法であるのに対し、

補強工法は土自身の物性を変えないで、地盤内部の応力・ひずみ状態を機械的に変化させ土を強化する方法です。この補強工法

は、固化工法よりも歴史は古く古来から存在します。

ダブルウォール工法は、多段のタイ材で結合された2重壁が中詰土を十分に拘束し補強することから、下図に示すところの盛土補強

の外部拘束(External Confinement)に位置づけられます。

低強度INSEMダブルウォールは、人工骨材を一切使わなくてもすむ程度までINSEM材の目標強度レベルを下げ、品質性能の足ら

ざるところを、このダブルウォール化による補強を援用することで、中詰材を必要な強度まで強化した工法です。 

 

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図-1  改良と補強/ダブルウォールの位置づけ

 

 拘束補強の原理


ダブルウォールの拘束補強の効果については、モール・クーロンの破壊則を用いて説明することができます。図に示すように水平な

面に主応力σ1、鉛直な面に主応力σ3、を仮定し、外力がかかると、中詰土は水平方向に膨張しようとしますが、2重壁で側方拘束

されていることで、タイ材に張力が生じます。その張力によって中詰土は互いに押し付けられ粒子間に力が増加して粒子間摩擦力も

大きくなります。それによって土のせん断強度の増加、いいかえれば粘着力Cの増加が見込めるのです。このことは、σ−τ 図内の

せん断強度をみてわかりますように、土を強化するという点では固結(ソイルセメント)による改良と同じ効果が得られることになります。

 

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図-2  ダブルウォールの拘束補強の原理

 

側方拘束補強によっていかに耐荷力が大きくなるかは、簡単な実験からも確認できます。

下図の実験は、リボンで補強したティッシュペーパー筒(中詰材は砂)を作成し、その上にウエイトを載せることで強さの違いを確認

したもので、強さの違いは一目瞭然、拘束補強が耐荷力に大きく寄与していることがわかります。

 

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リボンで補強したティッシュペーパー筒の抵抗実験

 

  供試体  

    高 さ:18cm

    直 径:10cm

   壁面材:3mmリボン

   中詰材:砂

  ウエイト:0.93kg/個

                                         
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図-3  側方拘束補強の強さを示す実験

 

 

 

 


 拘束補強効果の定量的評価方法


 

拘束補強効果に関する考え方と定量的評価方法は、名古屋工業大学名誉教授松岡先生による土のう理論や補強土擁壁の分野で

確立されており、多段のタイ材で側方拘束されたダブルウォールも、それと同じ考え方をとり入れることで合理的な設計を行うことが

できます。

  —「土のう」理論
    名古屋工業大学名誉教授松岡先生は、土を完全に包み込む<土のう>を対象にして、拘束補強された土の破壊強度式を
    理論的に導き、<土のう>自体の信じられない強さについて定量的な評価を与えています。
     <参考文献>
        松岡元.“「土のう」を活用した新しい地盤補強法”土木学会誌Vol.87.2003.p.89‐92
        松岡元著, 地盤工学の新しいアプローチ, 京都大学学術出版会 発行
  —多数アンカー式補強土壁工法の設計への導入
    多数アンカー式補強土壁工法/設計・施工マニュアル第3版には、盛土前面の直壁と背面のアンカープレートに挟まれた
    盛土材料がタイバーの張力によって拘束補強されてせん断抵抗力が増大することの考え方と設計方法が明記されています。

 低強度INSEM-ダブルウォールの設計方法


堤体の断面と構造は、中詰材のせん断破壊に対する安定性を確保するため、外力の作用により堤体内に発生する圧縮応力が、

その点で発揮される中詰材の圧縮強度以内となるように設計します。

その際、中詰材の圧縮強度は、これまで述べてきたダブルウォールの拘束補強効果をとり入れて評価します。具体的な設計方法

は次のとおりです。

(1)  最大圧縮応力度:σmax
堤体内に生じる最大圧縮応力度は、下流端の堤底の下流勾配方向に発生する。この最大圧縮応力度σmaxは、次式によって
算定できる。
             σmax = (1 + n2) × qmax 
  ここに、    n  : 下流のり勾配
        qmax : 下流端の最大地盤反力
 
この最大圧縮応力度が「砂防ソイルセメント設計・施工便覧,平成23年」p.42 に記述されている次式を満足しない場合は、
タイ材による拘束補強が必要となる。ここで、安全率はn=4を用いる。
       最大圧縮応力(σmax) ≦ 目標強度(σ) / 安全率(n)
 
(2)  ダブルウォールによる拘束補強:σta
ダブルウォールによる拘束補強は、壁面に連結するタイ材の張力とその取付け間隔によって決まる。タイ材1本当たりが
中詰材を拘束する下流壁面直角方向の応力度σtaは、次式により算出できる。
            σta = (Ta・cos a) / (Δh ・ Δv)
     ここに、Ta : 鋼材の許容応力度から決まるタイ材の引張力
          a : 下流壁面と鉛直面との角度
         Δh : タイ材の水平方向取付け間隔
         Δv :    〃  鉛直方向    〃
 
(3)  拘束補強により付加される圧縮強度:Δσa
タイ材1本当たりが中詰材を拘束する応力度 σta は、下流壁面に平行方向に圧縮強度を増大させる。その圧縮強度増分
Δσa は、次式より算出できる。
            Δσa = {σta ・ (1+sinφ) / (1-sinφ)} ・(1 / Fs
     ここに、 φ : INSEM材のせん断抵抗角
          Fs : 拘束補強に対する余裕としての安全率 1.0〜1.2
 
(4)  堤体内圧縮応力度に対する安定照査
堤体内に発生する圧縮応力が、その点で発揮される中詰材の圧縮強度以内にあるか照査する。中詰土の圧縮強度は、安全
率4を考慮したINSEM材の圧縮強度と、(3) で求まる拘束補強による圧縮強度増分を足し合わせたものとなる。
        σz ≦σa+Δσa
    ここに、σa  : 目標強度σiに安全率4を考慮したINSEM材の許容圧縮強度
             =1/4×σi
        Δσa : 拘束補強による圧縮強度増分
         σz : 任意深さZにおける圧縮応力度。天端でゼロとなる三角形分布と仮定すると、次式から求まる。
             σz = (σmax ・ Z) / H 
                 H : 堤体の高さ
 
このようにして、すべての深さにおいて強度を照査し、上式を満足するようにタイ材のサイズと配置を設計する。


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図-4  タイ材による拘束補強効果


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