ほんのちょっと妊娠するなんてあり得ない

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ルイス・L・アレン「ベンチャーマネジメント」(ダイヤモンド-タイム社・昭和48年)50-62ページ。
〈スモールビジネスマン—三つの資格〉から。
 
目先の生活を犠牲にできるか
 
スモールビジネス経営においては、製品やサービスのアイデアがほぼ固まっていることを前提にすれば、人材の選択がまず最初の必須条件になる—これが私の持論だ。
必要な犠牲を惜しみなくはらうスモールビジネスの経営が破綻した事実を、私は一度も見たことがない。
反対に、スモールビジネスの失敗のほとんどは、ひとりないしは二人の中心的人物に、犠牲的精神が欠けていたことにあるといってよい。
いくつかの良く知られていることわざがある。「報いをもとめずに、人のためにつくす」とか「あなたのビジネスがあなたのために何ができるかを問うな」(訳者注—ケネディ大統領の有名な演説を例に引いたもので、ケネディが「アメリカ」と言ったところを「ビジネス」に置き換えている)などは、事業形成の初期にぴったりのことわざだ。
 
 
幻想の花園
 
独立に踏み切る前に、あるいはすでに事業に着手している人にとって、私が最も肝要だと考えている個人的犠牲の別な面について、簡単にもう少しふれておきたい。
大きな犠牲を必要とするひとつの領域については、私が少し以前にかわした会話に良く示されている。ある紳士が私のオフィスを訪れた。彼はいきなり「私が好きな仕事は、自社の販売代理店組織づくりです」と話しだした。彼のこの発言には根本的な誤りがある。そして、こうした誤りは、自己選択の結果としてスモールビジネスの経営者となった人たちが、しばしば犯しがちな誤りなのである。ところでまず第一の誤りは、人が、ましてやスモールビジネスの経営者が、自分の職業の好みをあれこれいうほどのぜいたくな余裕はないはずである。自分自身が会社の最高の地位についたのだから、不愉快な仕事だとか雑用だからといって、避けるような選択はできない。
この世界には、あたえられた仕事をみごとにやり遂げる有能な人たちがたくさんいる。
 
 
正当な理由に基づいた出発
 
実例をあげるのは、このぐらいでいいだろう。では何が投資決定にあたっての第一の条件を満たすことになるのだろうか。投資相談にやってくる顧客に会う際に適用している一連のチェックリストをつくってみた。
 
1. このスモールビジネス志願者は、自分の行動の重大性を十分に認識しているのだろうか。今までにあげてきた例で、私は実際のところ、自分たちが何をしているかさえも適切に認識していない人たちについて述べてきた。時として考えるのだが、人が事業を起こす決定に踏み切ることは、結婚の次に重要な決断であるともいえる。誤った理由で事業に乗り出せば、離婚と同じように不愉快きわまりない心痛をもたらす結果ともなるのだ。
 
2. 自分自身の行動の重大性は認識しているものとしても、経営活動に耐えて行く気構えをもっているだろうか。スモールビジネスの経営には常に不安がつきものである。たとえ、出足が順調だったとしても、スランプや破産の危機がいつやってこないとも限らない。たいていの場合、創業当初の歩みははかどらず、失望は日常茶飯事のことである。ここで、自己修養が重要となってくる。この第二の難関を乗り越えるために、私のところへ投資相談にやってくる人たちに忠告したい。それは自分の事業のためには、個人生活さえも事業の必要に応じて、適応させる気構えのあることをハッキリと示してほしいのだ。私の友人は次のようなうまい表現をしている。「ほんのちょっと妊娠するなんてありえない」全くその通りである。問題は全力をあげての実行であり、貢献である。
 
3. このスモールビジネス経営者は本当に自分の事業について理解しているだろうか。単なる欲望とか動機とかいった理由では、私のチェックリストで100点をつけることはできない。自分がしていることを理解することは非常に重要であるが、それには実際に行なってみることが一番良い。一般的にいって、長い時間を必要とする問題でもあり、類似した仕事を経験するのが、最適な訓練ともいえる。しかし、こうした経験を積むことが、難しい場合もあろう。こうした場合には、各自の今までの違った分野での経験と実績から判断することにしている。私は前記の1および2のチェックリストで高い点を取った人なら、情状酌量の余地を認めている。立派な人であれば、新しい事業を学ぶことは時間の問題だけといえる。
 
ビッグビジネスに比較すると、スモールビジネスでの誤りは目につきやすく、大きな打撃となって、将来さえ左右しかねない。誤りをつぐなえないことが、スモールビジネスの最大の欠陥なのである。したがって、形成期での誤りをできるだけ避けるためにも、正当な理由に基づいた出発が必要なのである。これはそれ以後についても、誤りを訂正し、避けて行くという、スモールビジネスの根本であるのだ。
 
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